2013年4月13日土曜日

復興で優先すべきは、スピードかそれとも合意か


 ビデオ撮りしていた「マイケル・サンデルの白熱教室、これからの復興の話をしよう(東北大学ホール、NHK 201332日放送)」を今日視聴しました。

被災地の住民や学生1,000人と東日本大震災復興が現実に向き合っている困難や課題について話し合ったものです。

それは、参加動機の中で特に教授の心を打ったという東北大卒業生の女性参加者の一文を紹介するところから始まりました。

「東北の人間は我慢強くシャイ、人を傷つけるぐらいなら自分が耐えればいい。そういう気質を持っている。それは震災直後には自己犠牲をいとわない美徳として称賛を受けたようだが、逆に言えば本音を言って相手とぎくしゃくするよりは、議論しない方を選んでしまう。東北の人はそういう気質の人たち。だから今日の「白熱教室」はきっとうまくいかない」。

さて、東北人の気質の紹介から始まった白熱教室は、「復興の進み具合、そして将来の展望について」、「自主避難者にも経済的補償をすべきか」といった議論を経て、「復興で優先すべきは合意かスピードか」へと進みます。
 
津波により壊滅的な被害を受けた宮城県名取市の閖上地区。ここでは3メートルほどの嵩上げによる新たな街づくりが検討されている。しかし、住民の合意が得られていないという。教授は、「時間がかかっても復興は合意に基づいて進めるべきか、それともスピードを優先し、合意が得られなくとも早く進めるべきか」と課題を提起します。

これに対し、参加者から次のような発言がありました。

・間違えを恐れず、前に進むことが重要。
・今回の原発事故は、リーダーシップのもと早く行動を進めた結果生じたもの。全員の合意を得ることは必要。
・多数派のみならず、色々な意見を取り入れて全体に生かす方向性が必要。
・全員の合意を待つのは絵に描いた餅。必要なのは人命を失わないこと。
・復興は新しい街を作ること。コンセンサスというのは「合意」ではなく「納得」という言葉が合っているような気がする。復興のために行われている議論は、気持ちを納得させるにはあまりにも短すぎる。

教授は、「合意すること、つまり全員の意見を一致させることと、それぞれが納得して受け入れることは違うということ。全員の意見を採用することはできないかもしれないが、それでも、皆が暮らす地域を再建するには、全員の声を聞き、その意見について検討されることが大切。この議論は社会や政治の本質に迫る議論だった」とまとめます。

その上で、「津波や災害のないとき以外では簡単に合意を築ける場合があるが、逆に衝突を避けられる問題もある。しかし我々が話し合っているのは、人々がともにどうやって暮らしているのかという根源的な問いだ。いずれも簡単な問題ではない。すぐに合意が得られることはない。しかし、これらの問題について理解を共有することが大切。重要な問題だからこそ議論は大切だ。ともに敬意をもった議論であるべきで、相手の声を聴きながら、ともに学び合う姿勢が大切だ」と締めます。

ここで、教授は、始めに参加動機の一文を紹介した女性参加者に発言を求めます。

「今回、諦めない人々の声を聞くことができた。諦めないで自分の意見をはっきり言うということは大切なことだと思った。この気持を忘れないで、今後も進んで行けたらいいなと思う」。そう、東北人の気質のとらえ方に変化が生じます。

さらに教授。「現実に目の前にある問題の哲学的な問い直しだった。今日の講義の中で、私は感動を覚え、心を強く動かされた。復興をめぐっては、激しい意見の対立、価値観の大きな違いがある。それでも相手を尊重する精神を忘れず、意見の違いを認めあうことで、納得と理解に向けて議論を重ねようという決意を皆さんから感じ取った。今後数カ月、いや、数年に及ぶかもしれない復興への取り組みの中でも、この精神を保ち続けることができれば、今回の震災の悲劇の中からも、人と人とが生きていく上での希望に満ちた新しい関係が生まれることを信じている」と総括します

 この放送に大きな感銘を受けた方も多かったと思います。意見の対立、価値観の違いは日常的に起こります。合意が困難であっても、相手の身になって話に耳を傾け、互いの違いに納得する。違いを否定や批判することなく、受容する姿勢で相手を理解する。

先週の通勤電車で読んだ、精神科医泉谷閑示先生の「「普通がいい」という病」という著書の中に、次のようなとらえ方が示されておりました。白熱教室の総括にも通じますね。
 
・愛とは、相手が相手らしく幸せになることを喜ぶ気持ちである。
・欲望とは、相手がこちらの思いどおりになることを強要する気持ちである。

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